わたしたちの「キライ」という感情を担当している外側手綱核(がいそくたづなかく)というの脳の器官をご存じでしょうか?嫌な感情を担当しているといわれているこの領域は「われわれのやる気がでない」にもつながっている重要な器官です。
今回はそんな外側手綱核(がいそくたづなかく)について5段階のレベルで紹介していきます。
🧠 位置のイメージ

- 大脳皮質(表面) … 考える・感じる部分
- 間脳(真ん中) … 視床や視床下部がある部分
- 外側手綱核 … 視床のすぐ近く、「松果体」のそばにある小さな神経核
左右の大脳をつなぐ脳梁や松果体の近く、間脳の背側(上のほう) にちょこんとあります
5段階のレベルで解説(小学生むけから専門向けまで)
ここからは「外側手綱核」について5段階のレベルで解説をしていきます。
ご自身のレベルに合わせて読みやすいところから読んでみてください。
レベル1(小学生向け)
外側手綱核は、脳の中にある小さなスイッチみたいな場所です。
ここは「気持ち」や「やる気」に関係していて、特にイヤなことや楽しくないことに気づかせる役割があります。
レベル2(中学生向け)
外側手綱核は、脳の真ん中にある小さな神経の集まりです。ここは「嫌な気持ち」を作るのに関係していて、「うれしい」「楽しい」と感じる神経回路とバランスをとっています。
たとえば、テストでいい点をとったときは「うれしい」気持ちが強くなるけど、失敗したときは「いやだ」と感じますよね。この「いやだ」の信号を出しているのが外側手綱核です。
この働きがあるおかげで、人は「同じ失敗をしないようにしよう」と学んだり、「危険を避ける」行動をとれるようになっています。
レベル3(高校生向け)
外側手綱核は、手綱核の一部で、脳の間脳にあります。
ここは快楽をもたらすドーパミン神経系を抑える働きを持ち、報酬系のバランスをとっています。
具体的には、腹側被蓋野(VTA)のドーパミン細胞をおさえることで、「いやな気持ち」や「報酬が得られない感覚」を作り出します。
そのため、外側手綱核は「嫌悪系の脳領域」と呼ばれることもあります。
レベル4(大学生・医学部向け)
外側手綱核(lateral habenula, LHb)は、手綱核の中で特に報酬予測誤差(=自分の予測した報酬と実際に得られた報酬の差のこと)の負の信号を処理する中枢です。
LHbは大脳辺縁系(前頭前野、基底核、扁桃体など)から入力を受け、腹側被蓋野(VTA)や黒質のドーパミン作動性ニューロンを間接的に抑制します。
この抑制は主に中脳中心灰白質や中脳縫線核を介して行われます。
その結果、期待外れや不快な経験に伴う「ネガティブな学習」を脳に刻みます。
レベル5(専門家向け)
外側手綱核(LHb)は、報酬処理における負の予測誤差符号化に中心的役割を担う。
主にglobus pallidus interna(内節)やlimbic forebrainから入力を受け、rostromedial tegmental nucleus(RMTg, tail of VTA)を介してVTA/SNcのドーパミン作動性ニューロンを抑制する。さらにLHbは縫線核にも投射し、セロトニン神経系にも影響を及ぼす。
これにより、LHbは「嫌悪シグナル」を伝達し、うつ病様行動やモチベーション低下に深く関与することが示されている。慢性ストレスや報酬系の不均衡によりLHbの過活動が生じると、抑うつ病態に結びつく。


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