ベストセラー「スマホ脳」で日本でも有名になったアンデシュ・ハンセン先生の著書「運動脳」が集中力アップにかなり参考になりそうでしたので、興味深かった内容をピックアップしてご紹介。
この本の内容をひとことで表現するなら、
勉強や仕事で集中力が続かないなら「運動」をしろ!
ということです。
「運動なんて集中力と何の関係があるんだよ!」
「もっと頭を使う勉強とか難しいことした方が集中力高まるだろ!!」
そんな反論の声がすでに聞こえてきそうですが、実際の研究がそう物語っています。
ではでは、どんなメカニズムで我々のスマホまみれ、ジャンクフードまみれになった脳みそを「集中力やる気マックスの脳みそ」に変えてくれるでしょうか。
集中力を高めるのは「ドーパミン」
日常的にもっとも耳にする機会も多く、私たちのやる気の源にもなってくれるドーパミン。
宝くじが当たって脳汁ばんばん、スマホゲームで好きなキャラがガチャで出てきて脳汁だくだく。
そうです。このとき放出されているのがドーパミンです。
そもそもドーパミンとは
本書の解説では、気分を制御している物質で、特に動機付けや意欲、報酬を制御している神経伝達物質。また、集中力や動作とも密接にかかわっている。
つまり、スマホやゲームが気になって本当にやりたい勉強や仕事に対する集中力がないは、ドーパミンをうまく分泌させれば万事解決ということです。
ドーパミン放出量を増やす方法
ドーパミン放出量を増やすカギは「運動」です。
これに尽きます。
ある研究で、17歳の一卵性双生児200組に対して、その保護者に14の項目の質問リストに回答してもらったそうです。(14の項目には、注意力や衝動性、多動性といった項目が含まれる。)
3年後、、、
同じ200組の子供たちの保護者に対して同じ質問リストを回答してもらったところ、ほぼすべての子供で集中力に効果があったが、その中でも抜きんでて集中量が高まっている傾向の子どもがいた。
それが「運動」をしている子ども。
これは運動がドーパミンの分泌量を増やし、以下の効果が生まれるからだそう。
①脳の報酬系にあたる「側坐核」が活性化する
②意識する対象を取捨選択する能力をつかさどる「前頭葉」が活性化する
この前頭葉という脳の部位は集中力とかなりつながりが強い部分で、論理的思考や抽象的思考みたいな複雑な思考をつかさどるだけでなく、感情のコントロールも担当しています。
つまり、「運動をする」→「前頭葉が活性化する」→「集中力が高まる」という流れになるのですね。
また、前頭葉を活性化させ、集中力と自制心を科学的に高めるメリットについて有名な実験があるので紹介しておきます。
それが「マシュマロテスト」という実験です。
マシュマロ・テストとは?
1970年代に心理学の大学教授だったウォルター・ミッシェルが行った実験。
内容はシンプルで4歳児の前にマシュマロをひとつ置き、「20分待てばマシュマロを2つあげる」とだけ伝え、子供たちの動きを観察しました。
ほとんどの子供は、2~3分もしないうちにマシュマロを食べてしまったが、中には20分きちんと待ってマシュマロを2つ獲得した子供もいました。
ここでこの実験は終わりません。
なんとこのとき参加した子供を対象として、数十年にわたる追跡調査を実施。
そこで分かったことは、マシュマロをガマンして2つ獲得できた子供は以下の特徴があったとのこと。
- 勉強でよい成績を上げ、最終学歴も高等教育レベルに達していた。
- ストレスに上手に対処していた
- アルコール依存症や肥満、薬物依存の問題を抱えることも少なかった。
自分をコントロールする力が、勉強の成績にもつながってくるのはかなり驚きです。
この実験で観察された自制心は集中力とも密接にかかわっています。つまり集中力の向上が間接的に人生の成功につながってくるということを暗に示してくれる実験になっています。
どんな運動が集中力を高めるのか??
「じゃあ運動がいいのはわかったけど、どんなトレーニングすれば集中力あがるのよ」ってことになりますが、結論30~40分程度のある程度負荷が大きい運動の方が集中力を高める効果があるようです。
が、ここで諦めないでください。
ある研究では、週に3回45分のウォーキングをトレッドミルで行ったグループと、身体にあまり負荷のかからないヨガやストレッチ(=心拍数が増えないように体を動かす)を行ったグループの集中力を比較したそうです。※ちなみに、45分のウォーキングというと5,000歩くらい。
その結果は、ウォーキングを行ったグループの方がフランカー課題*をうまくこなし、選択的注意力(ほかのいらない情報を無視して集中力を持続させる能力)が向上しただけでなく、脳の「前頭葉」と「頭頂葉」が活性化したといいますから、ウォーキングみたいな負荷が低めの運動でもいいことづくめのようですね。
※フランカー課題とは・・・ノイズを無視して、注意したいものに集中力を向け続ける能力である「選択的認知」を計測するためのテスト。具体的には、「← ← → ← ←」「← → ← ← →」のような矢印が画面上に表示され、真ん中の矢印の向きを時間をかけずに回答する。
集中力を高めるトレーニング
本書に記載されているもので、ざっくりと目安を記載すると以下のようになります。
時間:30~40分程度(時間は長ければ長いほどいいというわけではないので注意!)
トレーニング方法:ランニング・サイクリング・早歩きなどの有酸素運動
頻度:週3日以上
期間:最低3か月以上
このような運動を続けていくと集中力の向上を実感できるようになってくるようです。
運動する時間がない方もあきらめないで。
このブログを書いている私も運動はしているほうだという自負はありましたが、それでも週3日&30~40分は週5日で仕事をしていて運動の時間が取れない方にはなかなかこのメニューが続かないのかなと感じています。
著者のアンデシュ・ハンセン先生は本書で上記のようなトレーニング方法を勧めてはいますが、最も重要な点として5分の短い時間でも、1歩からでも、楽しいと思える運動をまずは始めてみることをおすすめしております。
5分の運動でもまったく効果がないというわけではないそうです。まずは一歩踏み出してみて徐々に負荷を上げていくのがよいのかなと思いました。
最近「集中力が続かない…」と感じている方は、ぜひ集中力トレーニングとしての「運動」を取り入れてみてはいかがでしょうか?
次回:運動と記憶力をつかさどる海馬の関係について(受験勉強などにもおすすめ)
運動は集中力だけでなく、記憶力をつかさどる海馬も活性化してくれるというのよく知られた話ですが、ここら辺のメカニズムがかなり面白かったので、次回あたりで続編をかければなと思います。
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